大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成8年(ネ)4888号 判決 1997年5月20日

主文

一  本件各控訴をいずれも棄却する。

二  平成八年(ネ)第四八八八号事件につき生じた控訴費用は第一審被告らの負担とし、同年(ネ)第五二一三号事件につき生じた控訴費用は第一審原告らの負担とする。

事実及び理由

第一申立て

一  平成八年(ネ)第四八八八号事件

1  第一審被告ら

(一) 原判決中第一審被告らの敗訴部分を取り消す。

(二) 第一審原告らの請求を棄却する。

(三) 訴訟費用は第一、二審とも第一審原告らの負担とする。

2  第一審原告ら

(一) 本件控訴を棄却する。

(二) 控訴費用は第一審被告らの負担とする。

二  平成八年(ネ)第五二一三号事件

1  第一審原告ら

原判決を次のとおり変更する。

(一) 第一審被告らは、第一審原告小野誠司に対し、各自金一四六九万二一八一円並びに内金一三六九万二一八一円に対する平成五年八月一七日から並びに内金一〇〇万円に対する第一審被告兵藤征志(以下「第一審被告兵藤」という。)については平成七年三月一七日から及び第一審被告岡本建商株式会社(以下「第一審被告会社」という。)については同月一八日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(二) 第一審被告らは、第一審原告小野ヒデに対し、各自金一四九七万六〇六八円並びに内金一三九七万六〇六八円に対する平成五年八月一七日から並びに内金一〇〇万円に対する第一審被告兵藤については平成七年三月一七日から及び第一審被告会社については同月一八日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(三) 訴訟費用は、第一、二審とも第一審被告らの負担とする。

(四) 仮執行宣言

2  第一審被告ら

(一) 本件控訴を棄却する。

(二) 控訴費用は第一審原告らの負担とする。

第二事案の概要

次のとおり付加、訂正するほか、原判決の事実及び理由第二記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決六頁五行目の「正面衝突した」の次に「(以下「本件事故」という。)」を加え、同七行目の「右衝突事故」を「本件事故」と改め、同八頁八行目の「否か」の次に「、また、昌睦車に付保された自賠責保険から支払われた三〇〇〇万円(前記一の5(一))により損害を填補すべきか否か」を加える。

二  原判決六頁八行目の次に次のとおり加える。

「(第一審原告らの主張)

第一審原告らは、前記一の5(一)のとおり、昌睦車に付保された自賠責保険から三〇〇〇万円の保険金の支払を受けているところ、仮に昌睦の過失が被害者側の過失として斟酌されるとしても、右保険金は、昌睦の過失割合(三割五分)に相当する損害額(二一一四万一六〇七円)の限度では、昌睦の損害賠償責任の履行として支払われたものというべきであるから、三〇〇〇万円全額を第一審被告らの損害賠償額から控除することは許されない。

(第一審被告らの主張)

被害者において損害の填補として受領している自賠責保険の保険金は、損害賠償額から控除すべきであり、その保険金が昌睦車の保険から支払われているか、第一審被告らの保険から支払われるかに左右されるものではない。」

第三当裁判所の判断

一  当裁判所も、第一審原告らの第一審被告らに対する本訴請求は、原判決が認容した限度において正当としてこれを認容し、その余は棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決の事実及び理由第三における理由説示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一〇頁六行目の「路面は」の次に「本件事故当時」を加え、同一二頁一〇行目の「説示認定の」を「おいて認定説示した」と、同行目の「基いて」を「基づいて」と、同一三頁三行目の「突然」から同四行目の「しかるときは、」までを「第二車線後方を走行する車両の有無を確認することなく、かつ、車線変更の合図をせずにハンドルを右に転把して第二車線を走行中の昌睦車の直前に進出した過失により、本件事故を発生させたものというべきであるから、」と改め、同九行目の「認定説示の」を「おいて認定説示した」と改める。

2  原判決一四頁三行目の次に改行して、「なお、第一審被告らは、昌睦が急ブレーキをかけると共にハンドルを右に転把するという過剰な回避措置を採った結果、対向車線に進出して本件事故を発生させたのであるから、昌睦の過失が大きい旨主張するが、右の措置は、第一審被告兵藤の車両が突然自車の進路直前に進出してきたため、昌睦において衝突を回避するために採った措置であるから、このような措置を採ったことを考慮しても、過失割合については、右のとおりとするのが相当である。」を加え、同五行目の「に」を「において」と改める。

3  原判決一五頁初行の「勤務した」を「勤務し始めた」と改め、同一〇行目の「生活」の次に「関係」を加え、同一六頁八行目の次に、次のとおり加える。

「4 右に判示したとおりであるから、本件事故による亡奈津子の死亡による損害に関しては被害者側の過失として前記1の昌睦の過失と右3の亡奈津子の過失とを合わせて斟酌して、四割の過失相殺をし、第一審原告小野ヒデの受傷による損害に関しては同じく昌睦の右過失を斟酌して三割五分の過失相殺をすべきである。」

4  原判決一七頁六行目の「勤務した」を「勤務し始めた」と、同末行の「基いて」を「基づいて」と改め、同一九頁一行目の「保険者」の次に「(被保険自動車に搭乗中の者)」を、同頁六行目の「生活」の次に「関係」を加え、同二〇頁八行目の次に次のとおり加える。

「第一審原告らは、第一審原告らが昌睦車に付保された自賠責保険から支払を受けた保険金の全額を第一審被告らの損害賠償額から控除することは許されないと主張するところ、昌睦車に付保された自賠責保険から支払われた保険金であっても、本件事故によって生じた損害を填補するために支払われたものというべきであるから、これを第一審被告らの損害賠償債務から控除すべきことは当然である。第一審原告らは、右保険金は、昌睦の過失割合(三割五分)に相当する損害額(二一一四万一六〇七円)の限度において、昌睦の賠償責任の履行として支払われたものである旨主張するが、本件においては、前示のとおり、昌睦の過失は被害者側の過失として斟酌すべきものであり、その結果、本件事故によって生じた損害は右(五)のとおり三六二四万二七五五円と算定されるのであるから、第一審原告らの右主張は、独自の見解に基づくものであって、採用の限りでない。」

5  原判決二〇頁一〇行目の「しかるときは、」を削り、同行目の「原告らは」の次に「右(六)の亡奈津子に対する損害賠償額の」を加える。

二  よって、原判決は相当であって、本件各控訴はいずれも理由がないから、これをいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条、九三条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 加藤和夫 村田長生 後藤博)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例